1次試験のうち、最もつまずきやすいのが科目Ⅲです。中心は「市場と経済の分析」(いわゆる経済)で、これに「数量分析と確率・統計」と「職業倫理・行為基準」が加わります。配点はおおむね6:2:1(協会のスタディ・ガイド)。
他の2科目と比べ、経済は抽象的でざっくりしたモデルが多いせいか、若手で落とす人が最も多い科目は間違いなく経済です。モデルが抽象的で理解しにくいこと、証券アナリスト向けのテキストの解説が本当の入門者向けではないことが原因です。
経済は得手不得手がはっきり分かれる科目なので、苦手ならこだわらず、公式を覚えて逃げ切るという心持ちが重要です。
重要な範囲
経済(市場と経済の分析)は、ミクロ経済、マクロ経済、金融、国際金融から構成されます。この中で重要なのは次のとおりです。
- ミクロ経済の 企業行動
- マクロ経済の IS-LM、AD-AS
- 金融のうち 金融論の部分
- 国際金融のうち 為替レートの部分
経済は他の科目よりやるべき問題数が少ないので、4つとも重要といえば重要ですが、その中で特に重要な範囲を指定していると考えてください。
対策講義:ミクロは1階微分、マクロは連立方程式
経済は、未経験の人から見ると何をやっているのかわかりにくい部分が多いです。わかりやすい整理があるので不動産鑑定士の勉強法から引用します。
ミクロ経済=1階微分して最大値を求める、マクロ=連立方程式で解を求める(=方程式の条件を変えたら解がどう変わるかを理解する)、とシンプルに意識すればかなり簡単に理解が進みます。
このとおりです。ミクロ経済は「効用とは何か」などと考え出すとややこしいですが、企業行動(利益を最大化する行動)をメインに考えると理解が進みます。マクロ経済の IS-LM や AD-AS も、色々な要素はあるが、要はモデルとして2つの式で景気と金利、物価と景気の関係を示そうとしているだけです。
そういうモデルだと割り切ってしまえば、数式としてはかなり簡単なので、公式を覚えて問題に慣れればすぐ得点は上がります(なぜそのモデルなのか、と本質論に踏み込むと時間を失います)。
金融論や為替レートは、数式よりは普段ニュースを見ているかがポイントになりやすいです。時事的な出題やふわっとした設問も多く、そのあたりは常識で対応するしかありません。読解力がある人や、自分で FX をやっている人にはサービス問題です。
数量分析と確率・統計
期待値・分散・標準偏差・相関、回帰分析、確率分布の基本が範囲です。科目Ⅰの証券分析の CAPM やポートフォリオ理論で使う道具と同じなので、証券分析を勉強すれば自然と対応できます。独立に勉強するより、証券分析の計算練習の中で慣れる方が効率的です。
職業倫理・行為基準
協会の「証券アナリスト職業行為基準」の内容が問われます。この部分の得点が一定水準に達しないと、科目Ⅲの総得点が合格点を超えていても不合格になります(協会公表の合否基準)。配点は科目Ⅲの約1割と小さいですが、捨ててはいけません。
内容自体は簡単で、「顧客の利益を優先する」「重要な情報を隠さない」「インサイダー情報を使わない」という常識の範囲です。過去問を一度解いて、何が問われるかを見ておけば足ります。2次でも同じ分野が出て、そこでも足切りがあるので(2次の配点)、ここで一度慣れておく価値はあります。
書籍と勉強方法
経済は、他の2科目と違ってテキストが TAC だけではありません。
- TAC の総まとめテキスト・過去問題集(科目Ⅲ)
- 『試験対応 らくらくミクロ経済学入門』『らくらくマクロ経済学入門』(公務員試験向けの入門書)
既存知識がある人は TAC の2冊でカバーできます。ただ、ミクロ・マクロを全く初めてやる人には TAC のテキストはハードルが高く、もっとよい入門書が欲しいという人が多いです。色々な入門書がある中で、一番評判がよく、若手の得点が伸びたのが「らくらく」シリーズでした。もともとは公務員試験を受けていた若手に教えてもらった本ですが、図表の使い方と解説がうまく、解き方が一からわかる丁寧な本です。まず TAC のテキストを買い、解説がよくわからないと感じたら「らくらく」2冊を買う、という順でよいです(らくらくをやる場合は理解に時間をかけるので、多少時間がかかることを見ておいてください)。
手順
- 金融・国際金融の運が絡む問題より、ミクロ・マクロの公式を覚えていれば確実に解ける問題を先に潰す。ミクロの企業行動、マクロの IS-LM・AD-AS は必須で、まずここのテキストと過去問から。既存知識がある人は過去問から、ない人はテキスト → 過去問で、その範囲の過去問をすべて3回解く(やるページ数はかなり少ないです。理解できる人は1週間、できない人は「らくらく」を見ながら3週間を目標に)。
- これだけで科目の3〜4割の得点が確保できているので、次に金融・為替レートへ。為替レートは IS-LM の延長線上の問題が多いので、理解は容易なはずです。
- ここまで終えたら1年分の過去問を解いてみる。4〜6割くらいになるはずです。他の科目より得点はばらつきます。
- マクロ経済の残りの論点のうち、総まとめテキストの「過去の出題一覧と重要度」で「◎ または A」の部分(ほとんどすべてですが)をテキスト → 過去問3回。マクロ経済は覚えればそれで終わりという論点が多く、内容も単純です。例えばフィリップス曲線は「昔、インフレ率と失業率を観測したら、それっぽい関係があったかも」という図を示しただけです(ざっくり)。
- 多くの人はこの段階で合格ラインに達します。経済が苦手で届かない人は、こだわりを持つタイプの理系に多いので、ミクロ経済の数式を使う部分を多めに勉強して得点を稼ぎましょう。
- 職業倫理は過去問を1回通して、問われ方に慣れておく(半日で足ります)。配点は小さくても、ここだけは必ずやる。
この科目も、合格ライン確保後に余裕があれば、まだ手を付けていない重要度の高い部分(◎・A)をテキスト → 過去問3回でリスクを減らしましょう。