1次試験で最もボリュームが多いのが科目Ⅰの証券分析(証券分析とポートフォリオ・マネジメント)です。170分・170点と、他の2科目を足したのと同じ重さがあります。
多少複雑な数式を使い、専門用語も多いので、初めての人は苦戦するかもしれません。理系の人や統計の知識がある人は馴染みやすい科目です。2次でも証券分析の比重が高いので、余力があるなら3科目のうち最も力を入れる科目です。
重要な範囲
証券分析は、ポートフォリオ理論、債券分析、ファンダメンタルズ分析、株式分析、デリバティブ分析、証券市場の機能と仕組み、から構成されます。
広く浅く出ますが、公式さえ覚えてしまえば解ける問題が多いのが1次の特徴です(計算が多少複雑なことはあります)。その中で重要なのは次の論点です。
- ポートフォリオ理論の CAPM
- 債券分析のうち 債券価格の求め方
- ファンダメンタルズ分析
- 株式分析
- デリバティブ分析のうち 先物とオプションの基本、プット・コール・パリティ
対策講義:無裁定と現在価値
証券分析は、1次2次とも、基本となる2つの考え方を理解していれば8割方クリアできます。無裁定と現在価値の2つです。
証券分析でやることは、基本的に価格を求めることです。「○○=●●+▲▲」という式を立てて求めます。この式の多くが無裁定から導かれます。
無裁定とは、裁定取引(サヤ取り)の余地がない状態です。要は、100円の価値のものには100円の価格が付く、ということ。持ち続けても、今すぐ売っても、どちらが有利ということはない(だから式が「=」になる)という状態です。どちらかが有利ならみんながそうしてしまうので、理論的に行き着く状態だ、という理解でよいです。
現在価値は、複利で運用する前提で、将来のお金を今の価値に換算したものです。今年の利回りが10%なら、今年100円もらって10%で運用するのと、来年110円もらうのは同じこと。つまり来年の110円は今の価値では100円です。時点が違うと価値が違うので、比べる時点を「今」にそろえよう、という趣旨です。
あとは「将来の収益の現在価値の合計(持ち続けた場合)=今の価格(売った場合)」とか、「日本で1年運用した結果=アメリカで1年運用した結果」という具合に式を立てれば、価格でも為替レートでも求まります。ほとんどの公式は、この考えを数式にしただけです。なお、理屈がわからなければ公式を覚えましょう。点が取れれば十分です。
重要論点のポイント
- CAPM:ポートフォリオ理論の基礎。期待値・分散・共分散を使うので式に慣れる必要がありますが、単純に回帰分析をしているだけと考えればわかりやすいです。
- 債券分析:スポットレートとフォワードレートの違いに注意。「今後3年の利回りは平均3%」でも、1年目・2年目・3年目がすべて3%ということは普通ありえません。平均(今から n 年までの利回り)がスポットレート、将来の1年ごとの利回りがフォワードレートです(ざっくり)。要は、どの利回りで現在価値を求めるかだけなので、理屈がわからなければ覚えましょう。
- ファンダメンタルズ分析・株式分析:科目Ⅱの財務分析と内容がかなり重複します。試験全体の効率を上げるためにも集中して取り組みましょう。数式は簡単なものが多いです。
- 先物・オプション:仕組みは実はかなり簡単です。証券会社の入門ページなどで仕組みをつかみ、あとはプット・コール・パリティの式だけ覚えて、それ以外の難しい部分は捨てましょう。深入りすると時間を失う部分です。
証券分析のポイントは、公式を使って計算するだけの問題が非常に多いということです。①公式を覚えて、②計算を繰り返し練習して速度を上げる。これだけで合格できます。難しく見えても、試験に向けて実際にやることは非常に単純だと覚えておいてください。
書籍と勉強方法
市販の書籍は TAC の「総まとめテキスト」と「過去問題集」の2冊が必要十分です。他社の書籍もありますが、シンプルさに欠けます。詳しくやりたいなら協会の通信教材を見ればいいので、市販書を買う以上は合格に必要最小限のものがコンパクトにまとまっているかを重視すべきで、この観点では TAC 一択です。
関数電卓はあると便利ですが、仕事で使う機会は少ないので、機能が多く安価なもので十分です(計算に時間がかかって不安な人は持って行きましょう。余力がある人はいりません)。
間違っても、協会の推薦図書にある『新・証券投資論』のような専門書は買わないでください。アクチュアリーを受けるレベルで必要な書籍で、証券アナリストには1次2次ともオーバースペックです(専門性を高めたい人は別)。数学再入門の類も買うだけムダです。
手順
- 業務や学業で既存知識がある人は、テキストをやらず先に過去問から。わからない部分だけテキストを読む方が早いです。
- そうでない人は、テキストのうち重要な範囲だけ集中して読み、そのうえで過去問へ。重要な範囲の過去問をすべて3回繰り返して解き方を覚える。TAC の過去問はテーマごとに数問ずつなので、分量は多くありません。
- 協会の通信テキストに付いている過去問を1年分すべて解いてみる。重要な範囲は満点のはずで、それ以外は選択肢が少し絞れるレベルのはず。4〜5割前後の得点になるケースが多いです。毎日取り組んで、ここまでを2週間以内に。
- 総まとめテキストの「過去の出題一覧と重要度」で「◎ または A」の部分のうち、自分がやりやすいものを探して20点分を上乗せ。やっていて楽だったもの、過去問で理解しやすいと感じたものから(テキスト一読 → 過去問3回)。
- 試験直前に「証券市場の機能と仕組み」のような読み物レベルの部分を押さえれば、期待値は合格ラインを上回っています。TAC のテキストを半分くらい無視できていれば正解です。
時間に余裕があれば、まだ手を付けていない重要度の高い論点(◎・A)をどんどん埋めてリスクを減らしましょう。まず合格ライン確保のために範囲を絞り、その後に細かいことをやる、という順序は忘れないでください。